令和7年11月度 一金会 は、11月14日、約30名の参加で、下苙代表世話人の冒頭の挨拶から始まり、「温暖化対策を考える」~日本のエネルギー事情の課題~と題して、NPO法人蔵前バイオエネルギー副理事長兼事務局長の進藤昭夫氏を講師にお迎えし、講演を頂きました。進藤氏と下苙代表世話人とは市ヶ谷の県東京学生寮時代から旧知の仲とのことでした。
会場は、前回と同じ六本木の学校法人メイ•ウシヤマ学園です。
講演会の後は、講師を囲んでの懇親会でした。
1.地球温暖化の状況
地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来!
温暖化の主な原因:地球からの放熱が、大気中の「温室効果ガス」の増大により妨げられている!
温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)のほとんどは、二酸化炭素CO2⇒石炭、石油などの化石燃料や山火事などから排出、次にメタンCH4があるが、温暖化による凍土融解などで地中メタンの排出増加もある。
250年前の産業革命から化石燃料を大量に消費して大気中にCO2濃度が増加した。
世界平均気温は産業革命以前(1850~1900年)と比較し、過去最高の1.5℃上昇、海氷減少、氷河融解、海面上昇、猛暑、豪雨、サンゴ礁の消失、感染症などの生態系の被害が増大した。
2.温室効果ガス・二酸化炭素の排出
日本の国別CO2の排出量は、中国、米国、インド、ロシアについで5番目、一人当たりでは、米国、ロシアに次いで3番目。
地球温暖化対策の国際会議:COP(Conference of the Parties)は気候変動枠組条約の締結国会議、条約加盟国で気候変動問題/温暖化対策の国際的な合意形成や対策を決める。1997年COP3京都議定書と2015年COP21パリ協定を経て、2023年COP28ドバイでは1.5℃目標を強化すべく、2035年までに世界のGHG排出量を2013年比で約60%削減することが各国の新たな削減目標となっている。そのため、再生可能エネルギー拡大や原子力の導入を推進している。
3.日本のエネルギー供給状況
日本のエネルギー自給率は低く(世界37位、13.3%)、オーストラリアから石炭・LNGの主要輸入国であり、日本は約7割の化石燃料(石炭・原油・天然ガスLNG)を輸入している。日本の電源構成は天然ガス33.8%、石炭30.8%、石油8.2%、水力7.6%、原子力5.5%の化石燃料に対し、水力を除く再エネ(再生可能エネルギー)は14.1%で、ヨーロッパ諸国と比べ低くなっている。全体として、経済成長と共に発電電力量は増加、1973年石油ショック以降は電源が多様化(石油、石炭、LNG、原子力、再エネ)、2011年原発事故後の2012年から再エネが増加(再エネ買取制度開始)している。
4.日本のエネルギー政策の基本方針
2011年の震災後に、政府はエネルギー基本方針を「S+3E」(注)として策定、「自給率向上」と「温室効果ガス排出削減」を目指し、”再エネ”を積極的導入、政府はエネルギー基本計画として、3年毎に電源構成の達成目標を見直し、”エネルギーミックス”として提示した。
(注)S=Safety(安全性)、3E=Energy Security(自給率の安定供給)+Economic Efficiency(電力コストの経済効率性)+ Environment(温室効果ガス排出量の環境適合)
2030年におけるエネルギーミックスの実現に向けては、再生可能エネルギーの拡大にとどまらず、原子力や化石火力などとのバランスをいかに保つかが重要なポイント。
2030年の新「再生可能エネルギー」を目標に、政府は、2021年に環境政策の強化として、2030年度の温暖化ガス排出を26%削減から46%削減を宣言、これに従い、再エネは、今迄の目標の22~24%を、新たに36~38%に引き上げ、太陽光発電は2021年の2倍増、風力は約5倍の増強が目標となっている。
省エネの電気は、電力会社が「一定価格」で買い取る「固定価格買取制度(FIT:Feed-in tariff)」があり、買取期間は産業用が20年間、家庭は10年間となっている。 電力会社が買い取る費用は、電気利用者(一般家庭等)が「再エネ促進賦課金」として支払っており、再エネは国民負担により支えられている。この制度は再エネの普及促進を目的として制定された。国民負担の賦課金総額は2021年で2.7兆円に増大した。2030年では、年間4兆円が予測されるので国民負担の抑制が課題で、買取価格の見直しが進められている。
5.再生可能エネルギーの状況と課題
太陽光発電は、この10年間で大幅な伸びで、FIT制定後では設備容量は約10倍に増加した。固定価格買取制度FITにより、事業者は運用利益を得やすい。メガソーラ規模は、環境維持等から設置場所の制限があり、設置が困難になってきた。 発電量は天候に依存、日照により発電量が変わる変動電源への対応が必要となっている。
太陽光はエネルギー密度が小さい(薄い)資源なので、地域需要に応じた規模の発電で地産地消で利用する小規模分散型が理想。日本では土地面積が狭く、太陽光発電の設置場所は少ないため、建物屋根などへの利用を促進している。 新築住宅の屋根に東京都は2025年から条例でパネル設置を義務化している。 一例として、セブン&アイは、約8600店舗の屋根に太陽光パネルを設置し、自己の電力の一部をまかなっている。
風力発電は、FIT制定後の設備容量の増加は約2倍(太陽光発電の約10分の1)。騒音、資源環境維持などで、地元住民との協議が重要で、設置場所の環境アセスメントが長期化している。一定の風速があれば昼夜運転が可能なので、洋上風力の稼働率は太陽光発電より高い。設備利用率は、陸上20%、洋上30%。 落雷・台風などの自然災害で破損する場合があるので保守点検費用が、運転費用の約4割と大きくなっている。
6.将来に向けて「カーボンニュートラル(CN)」
CNとは温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。温室効果ガスCO2排出は、再エネ等で減少させ、残りは森林や海藻等でのCO2吸収により蓄積する。120以上の国が「2050カーボンニュートラル」の目標を目指している。
7.おわりに:地球温暖化対策
(1)再生可能エネルギー(再エネ)の活用
①温暖化の原因となるCO2濃度は、地球平均気温上昇を1.5℃に抑える対策が重要。
②再エネ(太陽光・風力など)活用は、化石燃料の仕様を減らし、CO2排出削減を増進
⇒日本は設置場所が少ないので再エネ拡大の課題がある。
③再エネの買取価格制度は、賦課金による国民負担の増大が問題。今後は?
④再エネの天候変動による余剰発電量対応には、系統用蓄電池への投資が必要。
(2)原子力発電(原発)に関して
①原発はCO2削減への貢献が大であるが、核廃棄物の処理問題が未解決。
②安全性を強化した小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)が開発中であるが実用化が課題。
⇒今後は「カーボンニュートラル」を目指したエネルギー政策の実現に期待


広報担当 河野泰士

