令和元年10月度の一金会は遠山詳胡子先生をお迎えして、
演題として「知ってほしい!これまでの結婚式と、令和の予想」で大変貴重なお話を伺いました。先生は、東洋大学大学院国際観光学修士で、(株)エムシイエス・遠山ビルディングの代表取締役、また東洋大学・亜細亜大学の講師も務めておられます。
先生は、人に教えるという事は、先ず自分がしっかりとした資格を取り、専門性を持つことが前提と考え、それを実践されています。お持ちの資格は、国際コーチ、メンタルヘルスカウンセラー、ファシリテーター、トータルイメージコンサルタントなどなど、多岐に渡っています。
お話の内容は、初めに結婚とは何かとの問いから始まりました。「結婚式では添い遂げることを誓います。しかしそれは、相方を看取る事でもあります。それはとても厳しい現実ですが、悲しさはそれまでの幸せの積み重ねでもあります。」
ブライダルの仕事というと華やかなイメージがあるが、結婚の深い意味を知ったうえで真摯に向き合うべきだという言葉に深くうなずいた。
「私の経験ですが、以前私がプロデュースした結婚式の新婦がDVに悩んだにもかかわらず離婚を躊躇するという事がありました。なぜなら、結婚式がとても素晴らしくて、多くの人に祝福もされたので、頑張らなくてはならないと思っていたからです。しばらくして離婚に至り、彼女からその報告を受けた時、私は申し訳ない気持ちでいっぱいでした。」という話には驚いた。しかし彼女は笑顔でこう言ったという。「確かに辛かったけど、精いっぱい頑張りました。その間に、医療事務の資格なども取りました。結婚生活を簡単に諦めていたら、今のように自信を持てて自立できる自分はないんです。」結婚式は、幸せのお手伝いでもあるが、その人のその後の人生のお手伝いでもあるのだ。
最近の生涯未婚率によると、男性は4人に1人、女性は3人に1人が結婚をしないらしい。また、何故か最近宮崎は離婚率が高い。こうした現状に驚きを隠せない。
ちなみに、婚活のために結婚相談所を利用する人が増えている。最近は独身証明書や収入証明、卒業証明等の書類が結婚相談所入会時に必要なことが多く、それも安心要因となっているようだ。
これまで、結婚式はそれぞれの時代の支配層やロイヤルファミリー、有名人の影響を受け続けてきた。例えば、山口百恵さん、ダイアナ妃、松田聖子さんの結婚式が、教会式が増えたきっかけであった。しかし今の学生たちは、そうした有名人のことすらあまり知らない。せいぜい海老蔵さんの結婚式を思い浮かべるくらいである。
よって、結婚式も新郎新婦の考えに基づいたものになってきていて、列席者へのおもてなしを大事にしたり、みんなが参加できることを大事にしたりと、多様性に富んでいる。
また、最近は結婚式を挙げない層が半数近くに上っている。価値観が変わってきているからである。結婚式の費用は近年350万円平均で推移しているが、それよりもこれからの新生活にお金をかけたいと考える人もいる。
親孝行をしたい、親しい人だけに囲まれたいなどの理由から、旅行を兼ねたリゾートウエディングを希望する人もいる。ハワイなどの海外ウエディングも人気だが、国内リゾートウエディングも盛んになってきた。
特に沖縄の躍進は特筆に値し、経済効果が極めて大きい。昨年は国内外から来県した17,115組が結婚式を行い、その消費額は224.5億円であった。それを支えているのは、沖縄ウエディング協会だけではない。沖縄県の観光振興課やコンベンションビューローの働きも大きい。公益的立場の行政機関や公益団体と、営利的立場であるブライダル産業や観光産業がタッグを組んでいるのである。それに習い、軽井沢、京都、北海道など、地方自治体が後押ししたブライダル協会が多くなってきている。観光事業の諸効果も鑑み、潮来(いたこ)花嫁、花嫁のれんなど、その地域の特徴を押し出した結婚式を一般から公募したりもしている。
経済効果を詳しく言えば、直接効果:ブライダル事業・観光事業、一次生産波及効果:サービスを提供するための原材料費など、二次波及効果:雇用促進と雇用所得の上昇など、多岐にわたる。
以前、宮崎県庁を訪れ、宮崎でもぜひ考えてみてほしいと訴えたことがあったが、その時はMICE(注)を中心に考えていると言われてしまった。しかし部長が変わったら、前向きにとらえてくれるようになり、今はいろいろなPRをしてくれている。要は「人」なのである。
現在、消費に対する意識は極めてシビアで、例えば自動車もコスパの良い軽自動車の割合が年々増えている。同様に、結婚式に対しても、しっかりの価値があるものでないと関心を持たない。
元々宮崎はハネムーンのメッカであり、ある年代以上、親の年代の人にとっては認知度が高い。そうであるならば、セカンドハネムーンなどと銘打って、親も一緒に来てもらって、宮崎リゾートウエディングをすることも一案である。それに、宮崎は東京から1時間45分と、ご年配の方や子どもや赤ちゃんが移動するのに無理がない。沖縄はそれよりも1時間以上長く、空港からリゾート地までのアクセスも1時間かかる。また、料理も宮崎の方が、味が優しいと感じる。と、宮崎ならではのスペックも紹介頂いた。
「実際、私の長男が結婚するとき、東京在住のお嫁ちゃんのご家族にも来てもらって、宮崎でリゾートウエディングをした。7,5,3,0歳の4人の子供を持つお嫁ちゃんのお姉さんご家族にもいらして頂いた。結果、皆さんに大満足して頂いた。」と、実例も挙がった。
結婚式を宮崎の観光資源にして、財政を活性化することの可能性を知ることができた。
今回の結婚のテーマは、深く考えていくととても重大な問題提起をしている大変貴重なお話であった。
時代の流れで、結婚だけではなく色々な事の変化がある昨今、経済を左右し活性化に繋がり観光経済を促し生存率と結婚、出産は人口が減るという事と長寿化、出産率、日本の経済と微妙に関連している事を重要視したい。
しかし個人の自由な生き方を損なってもいけないという事を含めて、難しく深く思い入れのある意義ある講演会であったとしみじみ思った次第である…何故この演題なのかと思っていたが、問題提起をして頂き誠に有り難うございました。
この後先生を囲み懇親会ではあちこちから声がかかり、和やかな講演会でありました。
(注)MICEとは、Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語で、ビジネストラベルの一つの形態。参加者が多いだけでなく、一般の観光旅行に比べ消費額が大きいことなどから、MICEの誘致に力を入れる国や地域が多い。日本でも、インバウンド振興策の一環として、国や自治体により誘致活動が盛んに行なわれている。
広報委員 藤田詔子〜☆